【入管】不許可になるには理由がある(ホテル・旅館編)

昨今、海外から日本への観光客が増加している中、

日本のホテルや旅館等においても、

外国人従業員が活躍している姿を見かけます。

人手不足と言われている現在、ホテルや旅館等の人材確保には、

外国人の存在は、もはや欠かせないものになってきています。

では、観光産業で外国人材を活用しようとするとき、

必要になる在留資格を得るために、どんなことに注意したらいいのか、

不許可事例を見ながら検証していきましょう。

在留資格に該当する活動

観光産業で働く外国人が取得可能な在留資格は、以下の通りです。

  • 技術・人文知識・国際業務:ホテルや旅館のフロント、企画・広報、通訳・翻訳、レストランサービスなど、専門的な知識や技術、語学力を必要とする業務に従事する場合に必要です。
  • 特定技能(宿泊):宿泊施設におけるフロント、客室清掃、レストランサービスなど、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる人材が対象です。
  • 特定活動(本邦大学卒業者):日本の大学や大学院を卒業した外国人留学生が、日本の企業で働く場合に取得できる在留資格です。小売店での接客など、これまで認められていなかった業務にも従事できます。
  • 身分系の在留資格:「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」の4つの在留資格は、就労制限がなく、日本人と同様に様々な業務に従事できます。
  • この中でも今回は「技術・人文知識・国際業務」の活動にしぼって解説していきます。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」

出入国管理庁(以下「入管」と言う。)では、

ホテル・旅館等における接遇を向上させる観点から、

在留資格の決定に係る運用の明確化と透明性の向上を図り、

申請する際の予見可能性を高めるために、

在留資格該当性及び許可不許可の具体例を公表しています。

「技術・人文知識・国際業務」の活動においての該当性は、以下のとおり。

(1)申請人が「自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務」

   に従事しようとする場合は、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識

   を習得していること

   ①当該技術又は知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、

    又はこれと同等以上の教育を受けたこと

   ②当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の

    専門課程を修了したこと

    ※ただし、「専門士」又は「高度専門士」の称号が付与された者に限る

   ③10年以上の実務経験を有すること

(2)申請人が「外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務」

   に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること

   ①翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝海外取引業務、

    服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、

    商品開発その他これらに類似する業務に従事すること

   ②従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を

    有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に

    かかる業務に従事する場合は、この限りでない

(3)日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること

上記の該当性(1)又は(2)の要件、かつ(3)の要件を満たす必要があります。

また、採用当初は研修のため、これらに該当しない業務を行う場合も予想されますが、

その業務が在留期間中の活動を全体と見て、

採用当初の一定の時期に留まるものでなければ認められません。

不許可事例

(1)大学で経営学を専攻して卒業し、ホテルに就職するとして申請があったが、

   主たる業務が宿泊客の荷物の運搬及び客室清掃であり、

   「技術・人文知識・国際業務」の活動に該当が認められず不許可となった。

(2)大学を日本語学を専攻して卒業し、旅館に通訳として就職する、

   として申請があったが、宿泊客の大半が申請人の母国語とは異なり、

   申請人が母国語を用いて行う業務として、

   十分な業務量があるとは認められず不許可となった。

(3)大学で商学を専攻して卒業し、ホテルに就職するとして申請があったが、

   従事しようとする業務内容が、駐車誘導や料理の配膳・片付けであり、

   「技術・人文知識・国際業務」の活動に該当が認められず不許可となった。

(4)大学で法学を専攻して卒業した者が、

   旅館のフロントや館内案内に従事するとして申請があったが、

   外国人の給料が月額15万円であるのに対し、

   同じ時期に同じ職種で採用される日本人従業員の給料は、

   月額20万円であることが判明し、

   報酬について日本人が従事する場合と同等額以上と認められず不許可となった。

(5)専門学校で服飾デザイン学科を専攻し、専門士の称号を付与された者が、

   旅館との契約に基づきフロント業務を行うとして申請があったが、

   専門学校において専攻した科目と従事する業務との

   関連性が認められず不許可となった。

(6)専門学校で、ホテルサービスやビジネス実務を専攻し、

   専門士の称号を付与された者が、旅館との契約に基づき、

   フロント業務を行うとして申請があったが、

   採用後最初の2年間は実務研修として、

   レストランでの配膳や客室清掃に従事することが判明し、

   在留期間の大半を「技術・人文知識・国際業務」の活動に、

   該当しない活動に従事することから、

   在留資格該当性が認められず不許可となった。

まとめとして

上記のように、外国人がホテル・旅館等で仕事をする場合、

在留資格と従事しようとする業務との該当性が必要になります。

たとえば、フロント業務に従事している最中に、団体客のチェックインがあり、

急遽、宿泊客の荷物を部屋まで運搬することになった。

そのような場合は例外となりますが、それが主な業務内容になる場合には、

「技術・人文知識・国際業務」として、

在留期間更新を不許可とする可能性があります。

外国人が安心して業務に従事できるよう、

雇用するホテル・旅館等の関係者の方は十分に注意しましょう。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」に関するお悩みは、

お気軽に当事務所へご相談ください。

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