遺言には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
法的に有効性の高いものと言えば「公正証書遺言」ですが、
いきなりは、ちょっと敷居が高いと思うかもしれません。
そこで、手軽さで言えばやはり「自筆証書遺言」ということになります。
まずは自宅で、練習のつもりで気楽に書いてみるのもいいかもしれません。
遺言は何度でも書き直すことができますから。
民法1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
民法1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、
後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
自筆証書遺言を書くにあたっては、以下のように守るべきルールがあります。
自筆証書遺言のルール
1,遺言書と明記する
2,全文を自筆する
3,日付を自書する
4,氏名を自筆する
5,印を押す
6,共同遺言の禁止
7,加除・訂正はしない
それでは早速、見ていきましょう。
1,遺言書と明記する
あなたから遺言書を受け取る側の家族が、明確に遺言書の存在を理解しなければなりません。
ひと目で「これは遺言書なんだ」とわかるようにタイトルをつけましょう。
2,全文を自筆する
民法968条1に、自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、
これに印を押さなければならない。
民法968条2に、自筆証書にこれと一体のものとして、相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、
その目録については、自書することを要しない。
この場合において、遺言者は、その目録の毎葉に署名し、印を押さなければならない。
上記の民法条文通り、全文を自書しなければなりません。
但し、財産目録についてはパソコンなどで作っても良いのですが、署名・押印が必要となります。
3,日付を自書する
上記の民法条文にある通り、日付も自書する必要があります。データ印のようなスタンプはNGです。
年は西暦でも元号でも構いません。日付の特定ができない「吉日」という記載はNGです。
4,氏名を自書する
上記の民法条文にある通り、氏名も自書する必要があります。
本人の特定ができるように、戸籍どおりの氏名を書くようにしてください。
さらに信憑性を高めるために、〇〇年〇〇月〇〇日生まれと生年月日や住所を添えることをお勧めします。
ニックネームなどはNGです。
5,印を押す
認印でも良いが、社会的に信頼性のある実印を押すことをお勧めします。
6,共同遺言の禁止
民法975条に、遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。
たとえ、夫婦であっても共同でひとつの遺言を書くと無効になります。別々で書きましょう。
7,加除・訂正はしない
全文を自筆で書くことは、とても大変なことです。
しかし、間違えたからといって加除・訂正をすると無効になるリスクが高まります。
失敗した遺言書は破棄をして、新しく書き直しましょう。
まとめに
ここまで、自筆証書遺言の守らなければならないルールを見てきましたが、
手軽に自宅で書けると言いましたが、実際に書いてみるとなかなかの重労働な気がします。
せっかく書いた遺言が、なんらかの理由で無効になることは避けたいものです。
そこで、最終的には「公正証書遺言」にすることをお勧めしますが、
「公正証書遺言」に出来なかったとしても、
あなたの書いた自筆証書遺言があれば、相続人である家族がそれを発見したときには、
たとえ法的効力が無くても、遺産分割協議などの大事な指標にすることができます。
なので、自筆証書遺言を書いておくことは、決して無駄なことではありません。
遺言・相続に関するお悩みは、当事務所へお気軽にご相談ください。