夫と妻がいます。二人には子どものがいません。
しかし、夫には前妻との間に子どもAがいました。
この場合に、もしも夫が亡くなり、相続が発生した場合には、
妻とAの二人が相続人になることが考えられます。
財産は、これまで夫と妻の二人で過ごした建物4000万円相当と、
預貯金が2000万円、合わせて6000万円ぐらいです。
さて、妻とAで相続となると、お互いの相続割合は2分の1づつとなり、
3000万円づつになりますが、、、、
問題点
ここで問題になるのが、
1,妻は建物に住み続けたい。
2,建物4000万円相当を相続すると、
Aに1000万円渡さないとならないけど、そんなお金はない。
3,建物を共有するほどAと仲は良くない。
4,預貯金がなく自宅だけを相続すると、これからの生活費が困る。
などといった悩みが妻には噴出します。
そこで、民法1028条 配偶者居住権の登場です。
配偶者居住権とは?
配偶者居住権とは、
配偶者である妻が居住していた夫の建物の全部を無償で、使用収益する権利です。
ポイントは「全部」を「無償」でになります。
夫が妻のためにできる対策
遺言書で、自宅をAに相続させ、妻に配偶者居住権を遺贈するという内容にしておけば、
妻は引き続き建物で生活することができ、
預貯金の財産もAと分け合うことも可能になり、生活に困窮することもなくなります。
注意すべき点
配偶者居住権の取得には、
配偶者は相続開始のときに、建物に同居していることが必要条件です。
妻が老人ホームなどに住んでいたら、配偶者居住権は使えません。
そして妻は、所有権とは違い、配偶者居住権を譲渡することはできません。
また、民法1032条で、妻には「善良な管理者の注意をもって」と義務付けられています。
Aの許可なく建物の増改築や他人に使用収益させることはできません。
そのような行為があった場合は、所有者は配偶者居住権を消滅させることができます。
まとめに
配偶者居住権は、令和2年4月に施行された新しい法律です。
高齢化の時代にあって、残された妻が老後の生活資金や住まいに、
困らないように保護される制度です。
逆に今までは、このような場合に、住まいを追い出されてしまうケースが多かったのかと、
少し寂しい気持ちを覚えます。
このような制度を知らないで、言われるがままに住まいを追い出されて、
生活に困る人が少なくなることを切に願います。
遺言・相続でのお悩みは、お気軽に当事務所へご相談ください。