【遺言・相続】配偶者居住権と配偶者短期居住権との違い

長年連れ添った夫婦がいました。二人に子どもはいませんでした。

夫はバツイチで、前妻との間に子どもAがいました。

夫が遺した財産は居住建物4000万円相当と、

預貯金2000万円の合わせて6000万円ほどになります。

夫が亡くなり相続開始となった場合、妻とAが相続人となり、

法定相続割合は妻が2分の1、Aが2分の1となります。

妻は現在の建物にできれば住み続けたいと思っています。

Aに建物の所有権が移ってしまった場合、妻はこの家に住み続けることができるのでしょうか?

配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、

夫が亡くなった場合、同居していた妻に居住建物の全部無償で、

使用収益できる権利を取得できるものです。

ただし、これは自然に与えられる権利ではなく

1,遺産分割協議により取得

2,遺言書による取得

3,死因贈与による取得

いずれかの方法により妻はその権利を得なければなりません。

1の遺産分割協議により権利を得るためには、話し合いによりAの同意が必要になってきます。

妻にとっては、こういう話し合いはかなりの負担になってくることが予想されます。

3の死因贈与は、「私が死んだら●●をあげる」という契約になるので、

夫婦間では、あまり実用的ではありません。

結論としては、2の遺言書に書いてもらうことが最も有効的です。

遺言書の内容としては、「妻〇〇に配偶者居住権を遺贈する」と書くておくことによって、

妻は配偶者居住権を取得することができます。

配偶者短期居住権とは

一方で、配偶者短期居住権とは、

夫を亡くした妻が、同居していた建物に一定期間(短期)は住むことができる、

という保護制度で、配偶者であれば、求めずして自然に与えられる権利となります。

これにより妻は、

1,遺産分割協議により居住建物の帰属が確定するまで

2,相続開始から6か月が経過するまで

いずれか遅い日まで建物に短期で居住することができます。民法1037条1-1

(もちろん配偶者とは、夫でも妻でも構いません)

注意すべき点

・配偶者短期居住権は、配偶者が従前に無償で使用していた部分にしか成立しません。

 なので、全部の使用は認められません

・第三者への使用については、所有者の承諾があれば可能です。

・配偶者短期居住権は、登記することはできません。

・配偶者短期居住権は、使用のみが認められ、収益をする権利は認められていません。

まとめに

配偶者居住権も配偶者短期居住権も、配偶者が困らないようにするための保護制度です。

違いは自然に得られる権利である配偶者短期居住権と、

手続きを踏まないと得ることができない配偶者居住権ということになります。

この違いを知ったうえで、今できる対策をして備えておくことが大切です。

不安なことがあれば、いつでも専門家に相談することをお勧めします。

遺言・相続に関するお悩みは、お気軽に当事務所へご相談ください。

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