遺言書を書いておいた方がいいケースに「子どものいない夫婦」があります。
ここではその理由について解説していきます。
◇遺言書を書いたほうがいい理由
例えば「子どものいない夫婦」の夫が遺言書を書かずに死亡した場合。
残された妻と法定相続人となる夫の家族とで遺産分割協議をすることになります。
夫が遺した財産の取り分についての話し合いをするわけです。
話し合いがまとまれば遺産分割協議書を作成して、そこに相続人全員に実印を押してもらい、
全員から印鑑証明ももらわなければなりません。
これをやらない限り、夫名義の不動産や預貯金などを動かすことはできないからです。
普段から仲が良かった間柄だとしても、財産の分配の話となれば話は別です。
非常に気を使ってしまうものだと思います。心労いかばかりかと察します。
ちなみに法定相続割合は次のようになります。
◇法定相続分
相続第一順位の子どもがいないため、第二順位の直系尊属である両親に相続権がいきます。
この時の相続割合は、配偶者である妻が3分2、亡き夫の両親が3分の1
両親がすでに亡くなっていたら夫の兄弟姉妹に相続権がいくことになり、
この時の相続割合は、配偶者である妻が4分の3、亡き夫の兄弟姉妹が4分の1になります。
それでは具体的に解説していくことにしましょう。
今まで二人で生活してきた住まいが、
土地建物合わせて3,500万円、預貯金が500万円、 合計4、000万円だったとします。
夫の両親はすでに他界。夫の兄が結婚して隣町で住んでいたとします。
◆遺言書がなかった場合・・・
遺言書が存在しなかった場合、
遺産分割協議を夫の兄とすることになりますが、後ろには妻(義理の姉)がいます。なにか嫌な予感がします。
民法に規定する法定相続分通りにすると、
配偶者が4分の3=3,000万円 兄が1.000万円となります。
「アナタ、法定相続分っていうのがあるのだから、もらえるものはもらいましょうね」と
義理の姉から耳打ちされた義兄から法定相続分どおりの1,000万円を要求されたとしたら。
妻は現金1.000万円をどう工面するのでしょう?
夫が遺した預貯金は500万円しかありません。
今住んでいる不動産を手放すか、銀行から借り入れするか、、、
いずれにせよすぐに用意できる金額とは思えません。
◆遺言書があった場合・・・
次に遺言書があった場合のことを考えてみましょう。
「妻〇〇に一切の財産を相続させる」との遺言書があった場合。
法定相続分よりも遺言書が優先されます。
兄弟姉妹に遺留分(法定相続人が当然に請求できる権利)はありませんので、
全財産である4,000万円を妻が取得できます。もちろん現在の住まいもそのまま住めます。
遺産分割協議もする必要がありません。
◇まとめ
以上のことからも「子どものいない夫婦」には遺言書をお互いに書いておくことをお勧めします。
ただし遺言書には守らなければ無効になってしまうルールがあります。
例えば民法975条に「共同遺言の禁止」があります。
「遺言は2人以上の者が同一の証書ですることができない。」と。
夫婦であっても遺言書は一人ひとり別々に作りましょうということです。
せっかく作った遺言書が無効にならないように、専門家に相談することをお勧めします。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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