【遺言・相続】遺言書を書いておく必要性が高いケースとは?

遺言書を書いておいたほうが良いと思っても、

なかなか機会がなく、それっきりになってしまっているという方も多いと思います。

遺言書を過去に書いたことのある日本人は、

推定で約1割という数字があります。

10人に1人という、極めて少ない結果です。

それに比べて、イギリスでは、

55歳の年齢で64%という、遺言書に対する高い数字が出ている違いがあります。

そのことからも、

これからの時代、遺言書に対する正しい理解と活用が必要になってくると考えます。

さて、遺言書の必要性が高いケースとしてどのような場合があるでしょうか。

代表的なのが、一人暮らしの高齢者です。

0,一人暮らしの高齢者

遺言書がないと、財産関係の整理が難しくなり、手間も費用もかかり、

残された相続人に迷惑をかけることもあります。

一人暮らしの高齢者は、元気なうちに、遺言を作成しておきましょう。

そのほか、遺言の必要が高いケースとして以下の場合などが考えられます。

①相続人以外に遺贈したい

②遺産について相続人間で対立が生じるおそれが高い

③特定の相続人に事業承継等で遺産を集中させたい

④相続人がいない

⑤相続人がいるが、特定の相続人には相続させたくない

などなど、ご家庭の状況などにより様々な事情が存在します。

それでは、次に具体的なケースを見ていきます。

1,夫婦の間に子がないとき。

遺言書がないと、法定相続により亡くなった配偶者の父母や兄妹、

あるいはその子どもに財産の一部が相続されます。

遺言書があれば、義父母を除いては、遺留分がないので、遺言書で指定したとおりに出来ます。

2,先妻の子と後妻がいるとき。

この場合、争いが起こる可能性が高いので、遺留分にも配慮が必要です。

また、内縁の妻は相続人にはなれないので、

遺言書がないと特別の寄与の制度(改正民法第1050条)を利用する場合は別として、

遺産を与えることができません。

3,事業を承継させたいとき。

事業に関する資産、株式を誰にどのように承継させるか、

その場合に、遺留分にどのように配慮するかなどに留意して作成します。

中小企業の事業承継についての特例があります。

改正前民法では、遺留分減殺請求権として生前の事業承継に伴う株式譲渡等も

譲渡そのものが減殺されるおそれがあり、中小企業の円滑な事業承継に資するため、

平成20年5月に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」

いわゆる経営承継円滑化法で民法の特例が設けられました。

この制度は、非上場株式に係る生前贈与等について、

一定の適用要件と手続要件

(推定相続人全員と後継者が合意し、経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可)

の下に、遺留分対象から除かれる除外合意又は株式価額の固定合意を認めるものです。

改正民法の下では、遺留分減殺請求はなくなり、遺留分侵害の損害賠償請求になりましたが、

後継者が生前贈与等より先代経営者から取得した自社株式(非上場株式)について、

遺留分算定の基礎財産から除外することができるため、

この制度を利用すれば、被相続人が贈与から10年以内に死亡した場合や、

遺留分侵害を知っていた場合にも、遺留分侵害額を低額に抑えることが可能となります。

これに関連して、

①税金につき、後継者が非上場会社の株式等(法人の場合)・

事業用資産(個人事業者の場合)を先代経営者等から贈与・相続により取得した場合において、

経営承継円滑化法における都道府県知事認定を受けたときは、

贈与税・相続税の納税が猶予又は免除されます。

②金融支援につき、事業承継の際に代表者個人が必要とする資金の融資を受けることができます。

会社及び個人事業主には、信用保証協会の通常の保証枠とは別枠が用意されます。

4,相続人不在のとき。

遺言書がないとそのまま国庫に帰属することになります。

遺言書を書くことにより、

お世話になった方への遺贈や慈善団体などへの寄付などが可能となります。

5,相続人ではない第三者に遺贈するとき。

長男の嫁に財産を分けてあげたいときは、遺言等がないと改正前民法では実現できませんでした。

改正民法の下では、特別の寄与として相続人に対して、

金銭請求をすることができるようになりました(改正民法第1050条関係)。

もっとも、遺言書があるときは、特別の寄与という請求をしないで、

直ちに遺贈を受けることができます。

6,相続人に財産を相続させたくないとき。

例えば兄弟、弟妹等の相続人のうち、特定の誰かに相続をさせたくない場合があります。

遺言書がないと、渡したくない相手も相続財産を取得するので、

遺言者としてはそれだけは避けたいという場合です。

しかし、民法第892条により推定相続人から排除する趣旨であれば、

遺言としての効力(民法893条)がありますが、

その要件は被相続人に対する虐待若しくは重大な侮辱、又はその他の著しい非行があったときで、

通常の場合は当てはまりません。

また廃除する趣旨ならば、排除する理由・根拠を整える必要があります。

単に相続させたくないという理由であれば遺言書に記載しても法的な意味はありません。

相続財産の一切について、相続又は遺贈を受ける者を指定すればそれで足り、

それ以上何も記載しなくとも、相続人Aは何も相続しません。

付言で記載することもあまりお勧めしません。

その理由は、相続人でありながら、相続をさせない旨記載された遺言を知ったAは、

遺言に不満を抱き、納得することはなく、ひいては遺言の効力等に疑いを持ち、

遺言無効等の申立をするなど紛争を引き起こすおそれがあり、

これを避けるためにもわざわざ触れない方が無難とも言えます。

ここに挙げたケース以外にも様々な状況によって、

遺言書を書いておいたほうが良いケースがあると思います。

そのような場合は、お近くの専門家に相談してみることをお勧めします。

遺言・相続に関するお悩みは、お気軽に当事務所へご相談ください。

行政書士赤堀昌治事務所のホームページ